保険で資産形成はできる?向いている人・失敗しない7つの判断基準
「保険で資産形成ができると勧められた」
「銀行預金より増えるなら保険に入った方がよいのか」
「NISAで投資するのと、貯蓄型保険ではどちらがよいのか」
このように迷っている人は多いのではないでしょうか。
最初に結論を書きます。
保険を使った資産形成は可能です。ただし、保険は本来、死亡・病気・長生きなどのリスクに備えるための商品です。
そのため、資産を増やすことだけが目的なら、預貯金やNISAを利用した投資の方が、仕組みがわかりやすく、資金も動かしやすい場合があります。
一方で、
・死亡保障を準備しながら積み立てたい
・自分で貯金を続けるのが苦手
・老後資金を半強制的に残したい
・運用だけでなく保障も必要
という人には、貯蓄性のある保険が選択肢になることがあります。
大切なのは「保険か投資か」という二者択一ではありません。
保障のためのお金と、増やすためのお金を分け、保険でなければ解決できない目的があるかを確認することです。
この記事でわかること
・保険で資産形成する仕組み
・資産形成に使われる保険の種類
・保険と預貯金・投資の違い
・保険で資産形成するメリットとデメリット
・保険が向いている人・向いていない人
・生命保険料控除についての注意点
・契約前に確認したい7つの判断基準
保険で資産形成するとはどういうことか
保険で資産形成するとは、支払った保険料の一部を将来の保険金、満期保険金、年金、解約返戻金などとして受け取ることを目指す方法です。
生命保険の保険料は、すべてがそのまま積み立てられるわけではありません。
保険料には、将来の保険金や給付金の支払いに備える部分のほか、保障や契約維持などに必要な費用も含まれています。
したがって、貯蓄性のある保険であっても、
支払った保険料=自由に引き出せる資産
ではありません。
商品や解約時期によっては、受け取る解約返戻金が払込保険料の合計を下回ることがあります。
生命保険文化センターも、養老保険や終身保険には貯蓄機能がある一方、「預けたお金が増えて戻ってくるとは限らない」と説明しています。
資産形成に使われる主な保険
資産形成に利用される保険には、いくつかの種類があります。
商品名だけで判断せず、何が保証され、何が変動するのかを確認することが重要です。
終身保険
終身保険は、死亡保障が一生涯続く保険です。
途中で解約した場合には、契約内容や経過年数に応じた解約返戻金を受け取れる商品があります。
死亡保障を用意しながら、将来使える資金を積み立てられる点が特徴です。
ただし、加入後早い時期に解約すると、解約返戻金が払込保険料を大きく下回る可能性があります。
低解約返戻金型の終身保険では、保険料払込期間中の解約返戻金を低く設定する代わりに、保険料を抑える仕組みが採用されることもあります。
長期間継続できることが前提になる商品です。
養老保険
養老保険は、一定の保険期間中に死亡した場合には死亡保険金、満期まで生存した場合には満期保険金を受け取る保険です。
死亡保障と計画的な貯蓄を組み合わせられますが、保険料は定期保険などと比べて高くなりやすい傾向があります。
また、満期保険金が払込保険料の総額を下回る商品もあります。
「満期になれば必ず増える」と思い込まず、払込総額と受取予定額を比較する必要があります。
個人年金保険
個人年金保険は、一定期間保険料を支払い、契約時に決めた年齢などから年金を受け取る保険です。
公的年金だけでは不足すると考える老後資金を、自分で準備する目的に向いています。
一定の条件を満たす契約は、個人年金保険料控除の対象になる場合があります。
一方で、物価が上昇すると、将来受け取る年金の実質的な価値が下がる可能性があります。
何十年も先に同じ金額を受け取っても、そのお金で買える商品やサービスが減っているかもしれません。
学資保険・こども保険
学資保険やこども保険は、子どもの進学時期に合わせて祝金や満期保険金を受け取ることを目的とした保険です。
契約者である親などが死亡した場合、その後の保険料払込みが免除される商品もあります。
教育資金の準備と保障を組み合わせられる点が特徴です。
ただし、途中解約による元本割れや、物価上昇・学費上昇への弱さには注意が必要です。
変額保険
変額保険は、保険料の一部を株式や債券などで運用し、その実績によって解約返戻金や満期保険金などが変動する保険です。
運用が順調なら受取額が増える可能性がありますが、運用実績が悪ければ払込保険料を下回ることがあります。
死亡保険金には最低保証が設定される商品がある一方、解約返戻金や満期保険金には最低保証がないこともあります。
「保険だから安全」とは限りません。
外貨建て保険
外貨建て保険は、米ドルなどの外貨で保険料を運用し、保険金、年金、解約返戻金などを受け取る商品です。
日本円より高い金利が期待できる通貨で運用できる場合がありますが、為替相場によって円換算後の受取額が変動します。
国民生活センターは、外貨建て生命保険について、為替変動や運用実績により損益が発生し、手数料の負担もあると注意を呼びかけています。
外貨ベースで受取額が増えていても、円高になれば円換算した受取額が払込保険料を下回る可能性があります。
「外貨では元本保証」と説明された場合でも、日本円で元本が保証されるとは限りません。
保険・預貯金・投資は何が違うのか
資産形成に使える手段には、それぞれ役割があります。
| 比較項目 | 貯蓄性のある保険 | 預貯金 | NISAなどを使った投資 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 保障と資金準備 | 元本を守りながら保管 | 中長期的な資産成長 |
| 元本割れ | 中途解約や商品によってあり | 一般的には限定的 | あり |
| 資金の動かしやすさ | 低い傾向 | 高い | 売却できるが価格変動あり |
| 期待できる収益 | 商品による | 一般的に低い | 商品と市場環境による |
| 死亡保障 | あり | なし | なし |
| 手数料のわかりやすさ | 商品によって複雑 | 比較的わかりやすい | 商品ごとに確認可能 |
| 税制 | 生命保険料控除など | 利息に課税 | NISAなら対象利益が非課税 |
| 向いている用途 | 保障を伴う長期資金 | 生活防衛・近い将来の支出 | 長期の資産形成 |
保険は、預貯金や投資の代わりになる万能商品ではありません。
それぞれの役割を整理すると、基本的には次のように考えられます。
・近い将来に使うお金:預貯金
・死亡や病気などへの備え:保険
・長期的に増やしたいお金:投資
・老後まで使わないお金:iDeCoなど
・保障と将来資金を一つの契約で準備したい:貯蓄性のある保険
資産形成の方法を一つに絞る必要はありません。目的と使用時期に応じて組み合わせます。
保険で資産形成するメリット
保障と資金準備を同時に行える
保険を使う最大の特徴は、万一への保障を用意しながら、将来の資金も準備できることです。
たとえば終身保険なら、契約期間中の死亡保障を確保しつつ、将来解約した場合に解約返戻金を受け取れる商品があります。
特に、家族に死亡保障を残す必要がある人にとっては、一つの契約に保障と貯蓄機能があることに価値があります。
半強制的に積み立てられる
預金口座にお金があると使ってしまう人でも、保険料として自動的に支払う仕組みなら積み立てを続けやすくなります。
ただし、途中で家計が苦しくなっても簡単に引き出せないことは、メリットであると同時にデメリットでもあります。
将来受け取る金額が把握しやすい商品がある
円建ての定額保険などには、契約時点で満期保険金や年金額などが決まる商品があります。
市場価格によって毎日資産額が変わることに不安を感じる人にとっては、将来設計を立てやすい場合があります。
ただし、受取額が固定されていても、物価上昇によって実質的な価値が下がる可能性はあります。
生命保険料控除を利用できる場合がある
一定の生命保険、介護医療保険、個人年金保険などの保険料は、生命保険料控除の対象になる場合があります。
ただし、生命保険料控除は、支払った保険料がそのまま税金から返ってくる制度ではありません。
所得から一定額を差し引いて税額を計算する「所得控除」です。実際に軽減される税額は、契約内容、支払保険料、所得状況などによって異なります。
税金が安くなることだけを理由に、高額な保険へ加入するのは合理的とは限りません。
保険で資産形成するデメリット
中途解約すると元本割れしやすい
貯蓄性のある保険は、契約後すぐに十分な解約返戻金が貯まるわけではありません。
特に加入後の早い時期に解約すると、払込保険料より受取額が大幅に少なくなることがあります。
住宅購入、教育費、転職、病気などで資金が必要になっても、解約すると損失が発生する可能性があります。
長期間使わないと判断できるお金だけを回す必要があります。
お金を自由に動かしにくい
預貯金は必要なときに引き出しやすく、投資信託なども売却によって現金化できます。
保険にも契約者貸付や減額などの仕組みがありますが、利用できる条件やコストは商品によって異なります。
資産形成では収益性だけでなく、必要なときに使える「流動性」も重要です。
仕組みや手数料が複雑になりやすい
保険には、保障、積立、運用、各種費用が組み合わされています。
特に変額保険や外貨建て保険は、
・保険契約関係費
・資産運用関係費
・解約控除
・為替手数料
・市場価格調整
などが受取額に影響する場合があります。
市場価格調整がある商品では、解約時の市場金利が契約時より上昇すると、解約返戻金が減少することがあります。
表面上の利率だけでなく、費用控除後にいくら受け取れるかを見る必要があります。
インフレに弱い商品がある
将来の受取額が固定されている商品は、金額を予測しやすい反面、物価上昇に弱い特徴があります。
たとえば20年後に300万円を受け取れるとしても、現在の300万円と同じ購買力があるとは限りません。
長期間の資産形成では、名目上の受取額だけでなく、物価上昇を差し引いた実質的な価値を考えます。
保障と運用の評価が混ざりやすい
貯蓄型保険では、保障にも費用がかかっています。
そのため、払込保険料と受取額だけを比較して「運用利回りが低い」と判断しても、死亡保障の価値が含まれているため、正確な比較にならない場合があります。
反対に「保障も付いているから得」と考えるだけでも不十分です。
その保障が本当に必要なのか、同じ保障を掛け捨て保険で用意した場合の保険料はいくらかを確認する必要があります。
「保険と投資を分ける」という考え方
資産形成では、保険と投資を分ける方法があります。
たとえば、
・死亡保障は掛け捨ての定期保険
・余った資金はNISAで積立投資
という組み合わせです。
この方法には、保障に必要な費用と投資する金額が見えやすく、家計の変化に応じて見直しやすいという利点があります。
一方、自由に売却できる投資では、途中で使ってしまったり、相場下落時に積み立てをやめてしまったりする可能性があります。
貯蓄型保険が向いているか、保険と投資を分けた方がよいかは、その人の性格や目的によって変わります。
判断するときは、次の2案を同じ条件で比較します。
案1:貯蓄型保険に加入する
・毎月の保険料
・死亡保障額
・払込期間
・払込保険料総額
・各時点の解約返戻金
・満期保険金や年金額
・途中解約時の損失
案2:掛け捨て保険と積立投資を組み合わせる
・同程度の死亡保障を用意する保険料
・毎月投資できる差額
・想定する運用期間
・投資商品の費用
・価格変動リスク
・途中で売却する可能性
将来の投資収益は確定しないため、単純に最終金額だけを比べることはできません。
しかし、保障額、毎月の負担、資金拘束、途中解約時の金額を並べることで、自分に合う方法を判断しやすくなります。
保険による資産形成が向いている人
次のような人は、保険による資産形成を検討する余地があります。
・死亡保障などが実際に必要
・長期間使わない資金を準備できる
・自分で積み立てを続けるのが苦手
・値動きのある投資だけでは不安
・老後や教育資金を目的別に分けたい
・途中解約の可能性が低い
・商品内容と費用を理解できる
重要なのは「投資が怖いから保険にする」だけで決めないことです。
変額保険や外貨建て保険には価格変動や為替変動があり、円建ての保険にも中途解約による元本割れやインフレのリスクがあります。
保険による資産形成が向いていない人
次のような人は、加入を慎重に考えた方がよいでしょう。
・生活防衛資金が十分にない
・数年以内に使う可能性のあるお金を預けようとしている
・死亡保障などが特に必要ない
・仕組みや費用を理解していない
・途中で保険料を払えなくなる可能性がある
・資産を自由に動かしたい
・節税だけを目的にしている
・短期間で大きく増やしたい
生活防衛資金が不足している段階では、長期保険より先に預貯金を確保する方が重要です。
急な出費のたびに保険を解約していては、資産形成になりません。
保険契約前に確認したい7つの判断基準
保険で資産形成するか迷ったら、最低限、次の7項目を確認します。
1.保険でなければ解決できない目的があるか
最初に確認するのは「どの商品が得か」ではありません。
・死亡保障が必要なのか
・老後資金を確実に残したいのか
・教育資金を決まった時期に用意したいのか
・単純にお金を増やしたいのか
目的が単純な資産成長なら、保険以外の方法も比較します。
2.払込保険料の総額はいくらか
月額保険料だけを見ると、負担が小さく感じられることがあります。
必ず、
月額保険料×12か月×払込年数
で払込総額を確認します。
ボーナス払い、更新後の保険料、特約保険料なども含めて考えましょう。
3.何年目に払込総額を上回るか
解約返戻金や受取予定額が、何年目に払込保険料の総額を上回るのか確認します。
10年後、20年後、払込満了時など、複数の時点で比較することが重要です。
払込満了時だけでなく、途中で解約した場合の金額も見ておきます。
4.受取額のどこまでが保証されているか
設計書には、保証された金額と、運用実績などによって変動する金額が記載されている場合があります。
高い運用成果を前提とした例だけを見ず、
・最低保証額
・保証されない金額
・想定より運用が悪かった場合
・為替が円高になった場合
を確認します。
5.どのような費用がかかるか
保険料からどのような費用が差し引かれるのか確認します。
具体的な費用が開示されていない場合でも、解約返戻率や受取率、契約概要、注意喚起情報などから負担を把握します。
「手数料は保険料に含まれている」という説明だけで終わらせないことが大切です。
6.途中で払えなくなった場合はどうなるか
収入減少、病気、教育費の増加などで保険料を払えなくなることがあります。
・解約
・保険金額の減額
・払済保険への変更
・契約者貸付
・払込猶予
など、利用できる方法とデメリットを確認しておきましょう。
7.他の方法と同じ条件で比較したか
預貯金、NISA、iDeCo、掛け捨て保険などと比較します。
比較するときは、期待収益だけでなく、
・保障
・元本割れリスク
・資金拘束
・税制
・費用
・換金しやすさ
・インフレへの対応
まで含めます。
保険で資産形成するときの実践的な順番
ステップ1:生活防衛資金を確保する
まず、急な病気、失業、家電の故障などに対応できる預貯金を確保します。
生活防衛資金まで長期保険へ入れてしまうと、緊急時に元本割れで解約することになりかねません。
ステップ2:必要な保障額を計算する
家族構成、遺族年金、勤務先の保障、住宅ローンの団体信用生命保険、現在の資産などを確認します。
必要保障額を計算せず、勧められた保険金額をそのまま受け入れないようにしましょう。
ステップ3:保障と資産形成を分けて比較する
貯蓄型保険の提案を受けたら、同じ保障を掛け捨て保険で用意した場合も確認します。
その差額を預金や投資へ回した場合と比べます。
ステップ4:使う時期を決める
教育費、住宅購入、老後資金など、使う時期によって適した方法は異なります。
数年後に使う資金を、長期継続が前提の保険へ入れるのは慎重に考える必要があります。
ステップ5:契約直前にもう一度出口を確認する
加入時だけでなく、受取時と解約時を確認します。
・いつ受け取るのか
・いくら受け取れるのか
・税金はどうなるのか
・解約した場合はいくらか
・外貨を円へ換える費用はいくらか
を自分の言葉で説明できない場合は、その場で契約せず、資料を持ち帰って確認しましょう。
生命保険料控除だけで保険を選ばない
生命保険料控除は、保険を検討する際のメリットとして説明されることがあります。
しかし、控除を受けるために不要な保険へ加入すると、軽減される税額以上の保険料を支払うことになります。
また、控除額は支払保険料そのものではありません。
契約日、保険の区分、年間保険料、所得状況などによって計算が変わります。
保険の目的が必要な保障や将来資金の準備であり、その結果として控除も利用できる、という順番で考えましょう。
まとめ|保険は「保障が必要な資産形成」に使う
保険を利用して資産形成することは可能です。
ただし、保険には保障の費用が含まれ、途中解約による元本割れや資金拘束、インフレ、為替変動などのリスクがあります。
保険を選ぶときは、
・保障が本当に必要か
・払込保険料総額はいくらか
・途中解約するといくら戻るか
・受取額のどこまでが保証されるか
・費用はいくらか
・長期間払い続けられるか
・預貯金や投資より保険が適しているか
を確認することが重要です。
保険は「保障と資産形成を一つにできる」ことがメリットです。
一方、保障が必要ない人にとっては、仕組みが複雑で動かしにくい資産形成方法になる可能性があります。
判断に迷ったら、次の順番で考えてみてください。
守るお金は預貯金、万一に備えるお金は保険、長期的に増やすお金は投資。
そのうえで、保障と資金準備を組み合わせる合理的な理由がある場合に、貯蓄性のある保険を検討します。
資産形成には複数の選択肢があります。全体像を確認したい場合は、資産形成の種類を知りたい|全体像が一瞬でわかる7分類と最適な選び方もあわせてご覧ください。
資産形成で失敗しないための考え方は、資産形成の考え方を知りたい|失敗しない人が必ず押さえる5つの思考軸で解説しています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品や金融商品を推奨するものではありません。保険の保障内容、解約返戻金、費用、税務上の取り扱いは商品や契約条件によって異なります。契約前に契約概要・注意喚起情報・設計書などを確認し、必要に応じて保険会社、税務署、税理士などの専門家へご相談ください。
参考にした公的・専門機関の情報
・生命保険料控除|国税庁
・外貨建て生命保険の相談が増加しています|国民生活センター
・定期保険・養老保険・終身保険の違いは?|生命保険文化センター
・養老保険|生命保険文化センター
・市場価格調整を利用した生命保険とは?|生命保険文化センター

コメント